Drivin' with The Devil

主に自作小説・ロック論・マンガ論などを”狭く深く”書いてます。 どうぞ気軽に楽しんでいってください。。。!! 

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「そろそろケリをつけないか?」
「そうね…」
「いつでも来いよ!」
「うん、わかった!」

 

『ビュウンッ…!』
 ミウは自分の言葉が終わるか終わらないかのうちに銛を突き立てた。

 

「ハアッ…!」
 今度はジョウジも正確に避けた。

 

 しかし、
「何っ?」
 あろうことかカーペットに躓いてしまった。

 

『ドッサァッ!』
 そのままもんどり打って床に仰向けに倒れ込むジョウジ。
 この絶好のチャンスをミウが逃すはずはない。

 

「ヤアァァァァァァーッ!」
 五年前の絶叫を凌駕せんばかりの気合でミウは銛を振り下ろした。

 

『ビジュウゥゥゥゥゥッ!』
「ぐはっ…!」
 鋭い銛がジョウジの身体を貫いた。
 それは銛がジョウジの肉体を刺した音だけでなく、床に刺さったことでミウに実感として伝わった。

 

「グボッ!」
 刹那に血をゴボゴボと吐くジョウジ。
「み、み…ごと…だったよ…」
 嘔吐物ではっきりと聞き取れないがミウにはこう聞こえた。

 

『ブワッ』
 堪え切ることができずにミウは泣き出した。
 涙はたちまち彼女の双眸を濡らす。

 

「ミウ、愛…し…てるよ…」
 ジョウジの目にも涙が浮かんでいた。
「私も。今でもジョウジを…愛してる…」
 ミウは泣きじゃくっていた。

 

「そうか…なら…早くと、どめを…頼む!」
『コクッ』
 ジョウジの願いにミウは無言で頷いた。

『ジャキッ!』
 銛をゴルフクラブのように両手で持つミウ。
「ハアッ!」
 そのままジョウジの首めがけスイングした。

 

『ブウンッ!ドバッ!』
 銛の横に備わっていた切っ先はジョウジの首を正確に捉え、一瞬にして彼を生首と胴体とに二分した。

 

『ゴロン…』
 血飛沫とともに床に転がるジョウジの生首。
 銛を捨てたミウはそれを両手で拾い上げ、慈しむように胸に抱いた。

 

「ウッウッウッ…」
 五年前と同じ嗚咽を漏らすミウだった。

 

 

 

「以上で全部です…」
 無表情のままミウは話を切り上げた。

 

「嘘言っちゃいかんよ、アンタ!」
 スーツ姿の中年男が声を荒げた。

 

「本当です。私はジョウジを殺しました。それは事実です。けど、ジョウジが悪魔のような男であったということもまた事実なのです。彼は…もはや人間ではありませんでした…」
 虚空をぼんやりと見詰めながら呟くミウ。
 

 

 ここは警察署、捜査一課の取調室。
 

 

 楠木ジョウジを殺害した容疑者として楡井ミウは逮捕、留置されていた。
 これまでの顛末をミウは取調べの刑事に話していたのだ。

 

「アンタねぇ、ふざけちゃいけないよ!」
 さっきの刑事が声を更に荒げ、掴みかからんばかりの勢いでミウに迫った。
「私は事実しか述べていません…」
 ミウの回答は同じだった。

 

「おいっ、ふざけるなって言ってるだろう!」
「こらっ、落ち着け」
 上司と思しき年配の刑事が中年刑事を制した。
「はい…」
 中年刑事も苛立ちを堪えて無言になり、椅子に座った。

 

「失礼しましたね」
「いえ、事実です…」
「今度は私から話しますね」
 年配刑事がミウの機械的な返事を無視して話し出した。

 

「楡井さん、貴女の証言には残念ながらいくつもの矛盾があるんですよ」
「事実ですから…」

 

「貴女の話で事実なのは貴女が楠木ジョウジさんを殺害したということだけです。楠木さんが五年前に貴女のご両親を殺害し、貴女のことも殺害しようとしたのも嘘なら、楠木さんが闇の組織を結成していたというのも全くの事実無根なんですよ」
「事実です…」

 

「厳然たる事実は貴女が楠木さんを殺害したことだけなんですよ。そして遺体を切り離してその生首を肌身離さず持ち歩いていた。それだけが事実で動機も何も皆目わからないんです。ですから楡井さん、貴女の確かな自白と言いましょうか、証言が必要なわけで…」

 

「厳然たる事実は今お話した通りですわ。私はジョウジを、人間ではないものへ変わったジョウジを運命から解放してあげたんです。」
 何を言われても同じ内容を繰り返すだけのミウ。

 

「フゥーッ」
 さしものベテラン刑事も根負けしたようだ。

 

「わかりました。ここで頭を冷やしていただくために一旦休憩を取りましょう。十分です、十分後にまた来ます。お手洗いの際はお手数ですが申し出てください」
『ガタッ』
 そういうと二人の刑事は取調室を後にした。

 

 

「……」
 虚空を見詰めたままのミウ。

 

(私は正しいはず!けど、けど…)
 彼女の脳の中で様々な思いが蠢いている。

 

(あの刑事の言うことが本当なのかしら?)
『ピキンッ!』
 ミウの脳内の奥深くで何かが弾けた音がする。

 

「アァッ!」
 突然何事かを思い出したのだろう、ミウの眼に生気が戻り、思わず声を発した。

 

(私は今まで人が変わってしまったのはジョウジだと思い込んでいた。けど、それこそが間違いだったんだわ!)

 

『ピキンッ!』
 脳内音は止まない。

 

(性格が変わったのは私…)
 生気を帯びたミウの表情がたちまち醜く歪み出した。

 

(旅行で『血の雨』を浴びたのは私だったんだわ!)
『ピキンッ!』

 

(卯美姫は私、すなわちミウそのもの!)
 彼女の思考は世にも恐ろしい方向へと発展する。
 ミウが『血の雨』に打たれたということも彼女の想像の範疇でしかないのに。
 それが真実であるという保証はどこにもない。

 

(ならばここだって簡単に出られるはず)
 しかしながら、ミウの自我はどんどん肥大化していく。
 彼女にとっての正義や正論は彼女の脳内の産物でしかない。

 


 けれどもそれは全ての人間に言えることなのではないだろうか?

 

 

 この世で一番恐ろしいもの。
 それは…?

 

 

(私こそが人間を超える魔女だったんだわ!)

 

 

 

 

 

 

~未完~

 

 

*この物語はフィクションです。

 

 

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コメント

こわかったぁ。
世の中のなにが真実でなにが嘘なのか・・・・。
ごちゃごちゃになりそうな金曜の深夜。
2009/09/25(金) 00:51:42 | URL | なっちん #79D/WHSg[ 編集 ]

えっ? 未完なの??? ってことは・・・???
2009/09/25(金) 00:52:33 | URL | sabaraja #79D/WHSg[ 編集 ]

え!? え!?
まだ続くの!?
2009/09/25(金) 09:34:43 | URL | Bear Pooh #79D/WHSg[ 編集 ]

あ、明日昼間にしよう(つ∀ヾ)見てないよ…
2009/09/25(金) 17:49:17 | URL | あ~たん☆☆ #79D/WHSg[ 編集 ]

意外な展開~最終回未完って(´・ω・`)モキュ?
2009/09/27(日) 07:39:05 | URL | あ~たん☆☆ #79D/WHSg[ 編集 ]

一気に読みました。面白かった。
江戸時代中期、5年前、それから1ヵ月後、現在、現在(エピローグ)
でも未完。さらに別の時系列があるのかもと思わせる。
「俺たちってさ、こうなる運命だったのかなぁ?」
手塚作品のような味わいでしたよ
2009/09/27(日) 15:02:52 | URL | KURUMI #79D/WHSg[ 編集 ]
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