Drivin' with The Devil

主に自作小説・ロック論・マンガ論などを”狭く深く”書いてます。 どうぞ気軽に楽しんでいってください。。。!! 

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 楡井ミウは二十三歳。


 

 日本を代表する一部上場企業、間旺(まおう)食品株式会社の本社で受付の仕事をしている。
 新卒で入社したミウは快活な性格で、もともと営業志望であったのだが、どことなく小鹿を思わせるような愛らしい風貌が上層部の目に留まり、会社の窓口ともいえる受付に配属となった。

 当初は希望した部署に配属されなかったこともあって沈んだ日々を送っていたミウだったが、持ち前の明るさと会社で最初に来訪者と接するこの仕事にやりがいを覚え、三ヶ月もする頃には外部は当然のこと社内でも話題の的となっていた。

 

 

 一方の楠木ジョウジも二十三歳。

 

 ミウと同じ間旺食品株式会社本社内にある第一東京支店の営業社員である。
 彼もまた新卒で入社したが、企画志望のところ望み叶わず営業に配属となった。
 どちらかというと内向的であまり人付き合いが得意ではないジョウジにとって営業の仕事は非常に苦痛を感じるものであったが、その実直さが顧客に受け徐々に成績を上げていき、それに伴って仕事の楽しさを感じ始めていた三ヶ月目であった。

 

 

 ミウとジョウジは高校の頃からの知り合いで、大学に入ってから交際をスタートさせた。
 社会人になろうとしたこの三月にジョウジはミウの両親に挨拶をして、結婚の意志を伝えた。
 それはミウにも知らされていなかったことであり、ジョウジの想いを聞いた彼女は歓喜のあまりその場に泣き崩れてしまった。
 ミウの両親も戸惑いながらも若い二人の愛を祝福し、すぐの結婚こそ認めなかったが同棲を容認した。

 

 こうして二人は新生活を迎えるにあたり、一緒に暮らすこととなった。
 二人が同棲をしていることは会社の人間は誰一人知らない。
 ミウは実家から通っていることになっているからだ。
 それどころか二人が交際していることすら知らない者がほとんどであろう。
 それくらい細心の注意を払っている二人だった。

 

 別にミウもジョウジもやましいことをしているつもりはこれっぽっちもなかったし、隠し立てするつもりも毛頭なかったのだが、社会的通念のようなものに二人は囚われてしまっていたのかもしれない。
 ともあれ、二人が家にいる時以外に二人でいる空間というのは出勤時の電車の中だけであった。
 だから常にジョウジと一緒にいたい気持ちが強いミウにとって彼の朝寝坊はその貴重な機会を失う忌むべきことだったのだ。
 それはジョウジも自覚していることだった。
 しかし、このところ仕事が忙しく帰りもミウよりいつも2・3時間遅い日々が続いていた。
 その疲れのせいもあるが、ジョウジは朝寝坊以上に自分がミウのことを十分構ってやれていないのでは、という自責の念をこのところ抱いていた。

 

『シャカシャカ』

「これじゃダメだよなぁ。」
 ぞんざいに歯を磨きながら鏡の中の自分をぼんやりと眺めるジョウジだった。

 

 

 その日一日をジョウジはどこか上の空のような状態で過ごした。
 いや、上の空というよりも何かに没頭するが故の呆けとでもいうべき状態であった。
 彼は一つの提案を思いつき、それをミウに発表したくてウズウズしていたのだ。
 外回りをしていて客先に趣いた時でも心ここにあらずなのだった。

 

「フフン、フフフン♪」
 家路を急ぐ頃には自分の思いつきがミウとの時間を深めることができると確信し、普段はやらない鼻唄など唄っていた。

「フンフンフン♪」
『トントントントン』
 一方のミウは一足先に帰宅していた。
 偶然にもジョウジと同じく鼻唄を唄いながら包丁をリズミカルに操っていた。
 自家製の焼き豚を切っているところだった。
 側らでは味噌汁が入った鍋の蓋が沸騰するかしないかのタイミングでカタカタと音を立てていた。

 

 

 ミウ自身は行きと同様帰りもジョウジと一緒に帰りたいという願望を持っており、当然そのことは彼に伝えていた。
 しかし、ジョウジがそれを断ったのだ。
「俺の仕事はいつ終わるか約束できないからミウを何時間も待たせたくないんだ。」
 ジョウジの気遣いは痛いほど伝わってきた。
 だから自分の意見を引っ込めた。
 その代わりこうして必ず夕食を作ることで少しでも彼の役に立とうと決めたのだった。

 

「フンフフフン♪」
 鼻唄がよりリズミカルになる。
 何だかジョウジが素敵な知らせを持って帰ってきそうな気がしたからだ。
『ガチャガチャ!』
 ジョウジだ。
「おかえり!」
 ミウは素早く料理の手を休め、愛する男を迎えた。

 

「ウソッ、マジで…?」
 驚きの声を上げるミウ。
「ホントだよ。今度の週末二人で旅行へ行こう。」
 ジョウジはさっき言った言葉をもう一度優しくミウへ伝えた。
「二泊だと近場になっちゃうけど、何処か行きたい所選んでさ。」
 夕食を終え、ミウの手作りプリンを美味そうに口に運ぶジョウジ。
「アハッ、嬉しい!」
 ミウは慌てて立ち上がり、コーヒーがなくなりつつあるジョウジのためにサーバーを持って来ようとした。
 その目にうっすらと嬉し涙が光ったのをジョウジは見逃さなかったが、あえて何も言わずにプリンを食べることに没頭した。
「私のために金曜日有給まで取ってくれて。今営業課月末で追い込みでしょ?なのに…」
 滲んでくる涙を拭おうともせずにミウはコーヒーのおかわりをジョウジのティーカップに注いだ。
「いいんだって!仕事も大事だけどそれよりもミウの方が俺にとっては大事なんだ。気にしないで君も遊休取りなよ。」
「ウン、ありがとう。」
 ジョウジの想いを感じ、一層胸が熱くなるミウ。

 

「さて、これ食べたらどこへ行くか決めようぜ!」
 ジョウジがそう提案すると、
「アッ、私別に行きたい所ってないんだ。逆にジョウジが行きたい所に行ってみたいわ。」
と、モジモジしながら答えた。
 その様子を見てジョウジは改めてミウのことをいとおしいと思った。
「本当にいいの?」
「ウンッ!」
「それじゃ、俺が決めるね。」

 

『ブゥン』
 喜び勇んでジョウジはリビングの隅に置いてあるデスクトップのパソコンを起動させた。
「カタカタカタ…」
 パソコンが立ち上がった瞬間に、凄い速さで検索エンジンから情報を探り出す。

 

「俺さぁ、前からここに行きたいと思ってたんだよねぇ。」
「エッ?お、面白いかもね…」
 少し怪訝な表情を見せるミウ。

 

 何故ならパソコンに映った旅行会社のサイトには、
”魔女伝説探訪ツアー”
の文字が派手に踊っていたからだ。

 

 

 

~つづく~

 

 

*この物語はフィクションです。

 

 

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コメント

微妙なツアー“「(・ェ・o )(「o・ェ・)”ドコダァ?
2009/08/29(土) 20:38:29 | URL | あ~たん☆☆ #79D/WHSg[ 編集 ]

魔女伝説探訪ツアーとは…
不思議な物語の始まりですね!
2009/08/29(土) 21:57:41 | URL | nami丸 #79D/WHSg[ 編集 ]

さてさてこの旅で何が起こるのかな( ´艸`) ワクワク
2009/08/31(月) 10:31:32 | URL | Bear Pooh #79D/WHSg[ 編集 ]
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