Drivin' with The Devil

主に自作小説・ロック論・マンガ論などを”狭く深く”書いてます。 どうぞ気軽に楽しんでいってください。。。!! 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 毎度。。。!!

 

 今回の「手塚治虫作品論」は少年誌に連載された傑作短編集「ザ・クレーター」を再論したい。

 

 

 ではいってみよう。。。!!

 

 

収録作品

 

二つのドラマ

 

 シカゴのスラム街に住む不良少年ジムはある時から失神すると別な人間の人生を送る夢を見るようになる。

 彼は夢の中では日本人の金持ちの息子隆一として裕福ながらも鬱屈した生活を送っていた。

 

 人間の脳に映る光景をドラマ化してみせた傑作ショート。

 ラストのどんでん返しに戦慄を覚えること必至。。。!

 

 

溶けた男

 

 内ゲバが横行するR大学のとある研究室で特殊な薬品を研究している学生、佐藤。

 彼が作っている薬品は米軍から極秘で依頼された兵器だった。

 佐藤はある夜現代には似つかわしくない格好をした坊主頭の奇妙な学生と出会う…

 

 手塚が得意としている不条理劇の秀作。

 佐藤が何故ラストのような局面に遭わなければいけないのか?

 そして坊主頭の学生、岡田を組み込んだことで反戦(嫌戦と言うべきか)部分が際立った。

 

 

雪野郎

 

 全日本スキー選手権で常に優勝を争うライバルである奥野と佐々木。

 毎年彼らは大会の前に二人だけで腕を競い合っていた。

 今年も競い合いの時が訪れたのだが…

 

 この作品群では比較的地味な味わいの一編。

 どことなく「ブラック・ジャック」の「ナダレ」を思わせる(実際は「B.J」が後だが)。

 

 

風穴

 

 助手席にマネキン人形“ユカリ”を乗せて常に優勝するレーサーとマネキンを忌み嫌うライバルの男。

 彼らはルームメイトでもあったのだが、ある日マネキンに関して白黒をつけるべく富士山ふもとの洞窟へと向かう…

 

 マネキンを愛する歪んだ男と、それに嫉妬する歪んだ男との愛憎入り混じる物語。。。!

 こんな変態的エピソードをよく少年誌に描けたものだと驚かずにはいられない。

 設定もドラマも破綻しまくっているが、これもまた手塚作品のタマラナイ魅力の一つ。。。!!

 

 

三人の侵略者

 

 地球を征服するべく、三人の宇宙人が地球を偵察にやって来た。

 そこで彼らが目にしたものはギャングの潜伏に恐れる一家と〆切を恐れた漫画家だった…

 

 ホラーとギャグを巧みに組み込んだエピソード。

 時折大ゴマで劇画調の絵も見られるが、そこには不思議と藤子不二雄Aの影響を感じる。

 この作品には珍しく珍妙なラストが印象的。

 

 

オクチンの大いなる怪盗

 

 先生に目の敵にされる不良生徒オクチン。

 彼の頬には「過去・未来ご意見無用」と書かれた絆創膏が貼ってある。

 ある日先生に怒られ居残りをしていたオクチンのもとへ謎の男が現れる。

 

 SFらしくないSF。

 当時の世相を反映してかジャクリーン・ケネディが登場する。

 軽快なテンポで読ませるが、未来について色々と考えさせられる展開は流石手塚だ。

 

 

双頭の蛇

 

 近未来のアメリカでは黒人の人口が白人と肩を並べるまでに至った。

 黒人も白人と平等の権利を勝ち取るが、それを快く思わない白人たちもいた。

 シカゴにのさばる組織”双頭の蛇”もそんな白人たちが作った犯罪集団だった。

 

 「空気の底」の「ジョーを尋ねた男」と並ぶ人種差別をえぐり出した凄まじいエピソード。

 掲載誌が少年誌だとて手塚の思想に揺らぎは全くない。

 互いに苦悩する黒人と白人をわずか10数ページで描き切るのだから怖ろしい。。。!

 

 

大あたりの季節

 

 最近のオクチンは何をしても大当り。

 テストで満点を取ったばかりか可愛い彼女クミちゃんまでできた。

 何故そんなにツイているのか、ついに番長が探りに乗り出した!

 

 この話も不条理に満ちた内容だ。

 番長が体験するラストの不条理こそこの物語の肝。。。!

 

 

巴の面

 

 悲しい最期を迎えた巴姫の顔の皮でできたといういわれのある”巴の面”

 漫画家手塚は巴の面を商品化したいというおもちゃ会社の依頼で面を預かることになるのだが…

 

 作品集中群を抜く出来のホラー短編。。。!

 読むとゾッとする展開が見事。

 そして爽やかな読後感を味わえるラストも秀逸。。。!!

 

 

オクチンの奇怪な体験

 

 オクチンはある目的のために30万円の貯金を目指している。

 そのため学校内で彼は何でも屋として奔走していた。

 そんな彼のもとへ「あるものを預かってくれたら30万払おう」と不思議な男が申し出る。

 

 ”一心同体”をモチーフにして作られたコミカルなエピソード。

 だけど、ラストでホロリとさせる作りをする辺りが手塚の上手さ。。。!

 

 

八角形の館

 

 漫画家隆一は創作活動に行き詰まり、かつて漫画家になる決心をした八角形の館を再び訪れた。

 そこに行けば人生が一回だけやり直せるからである。

 人生をやり直した隆一はプロボクサーになっていた…

 

 「もしも人生がやり直せたら」という人間であれば誰でも一度は持ったことがあるであろう願望を描いた傑作エピソード。

 これが傑作たりえたのはラストのどんでん返しの見事さと、そこから湧き起こる恐怖が凄いからである。

 素晴しい。。。!!

 

 

墜落機

 

 未来のどこかの国での架空の物語。

 戦争にパイロットとして参戦していたオクノは特攻に失敗し、墜落する。

 軍上層部はそれを名誉の戦死扱いとし、士気向上のためにオクノを軍神として祀り上げる。

 しかし、オクノは生き延びていた…!

 

 不条理もこれ極まれりの傑作。

 何度も何度も死の憂き目にオクノに同情せずにはいられない。

 プロパガンダの滑稽さ、無意味さを手塚は冷徹な目で描き上げている。

 

 

鈴が鳴った

 

 足掛温泉に泊まりに来ていた3人の客。

 3人は知り合いでも何でもなかったが共通点が一つだけあった。

 それは鈴の音がトラウマになっていることである。

 

 ”良心の呵責”を核にしたエピソード。

 ホラー仕立てになっているのが実に面白い。

 

 

ブルンネンの謎

 

 P中学校の陸上部は富士一周のマラソンをするほど厳しいトレーニングを積んでいる。

 そのコースの中腹にブルンネンという喫茶店があるのだが、そこの経営者夫婦にはある謎が隠されていた。

 

 オンディーヌの物語を下敷きにしたであろう悲恋もの。

 経営者夫婦の恋愛はプラトニックなものであるが、よくこれを少年誌に描けたなと感心してしまう。

 

 

紫のべムたち

 

 村のいじめられっ子カン太郎は知恵遅れの子供だった。

 兄の隆は弟を不憫に想うのだが、ある日帰りが遅くなったカン太郎を捜しに出た彼はとんでもないものを目にしてしまう。

 

 牧歌的な田舎の風景とSFを絡めた小品。

 全エピソード中最も読後感が爽やか。

 

 

生けにえ

 

 2000年前のメキシコで今にも生けにえとして首を刎ねられんとする少女チクワナ。

 彼女が命乞いをすると「10年だけ普通の生活をさせてやる」という天の声が聞こえ、彼女は海をボートで漂い、ある島へ漂着する。

 

 不条理劇の最高傑作。

 そうとしか表現できない。

 チクワナの運命に涙せずにはいられない。。。

 

 

クレーターの男

 

 197X年、アポロ18号が月面探索を行っている時、探査員ウイリーはアクシデントでクレーターの中で首を吊った状態になり行方不明となる。

 やがて酸素がなくなり、ウイリーは一度死ぬが、月面から噴き出す不思議なガスの力で生き返った…!

 

 悲しい悲しい物語。

 ウイリーの途方もない孤独を癒せるものは誰もいない。。。

 

 

 

 「ザ・クレーター」は1969年から1970年まで少年チャンピオンに連載された。

 

 現在は講談社手塚治虫全集や秋田文庫などで手軽に読むことができる。

 

 この作品集は以前紹介した「空気の底」(1968年~1970年)と同時期に描かれており、ドギツイ描写目白押しの「空気の底」に比べると大分ソフィスティケイトされているが、共通点も多い。

 (過去記事:http://myhome.cururu.jp/drivemycar1965/blog/article/41001609296参照)

 

 暗く重いエピソードが多く、ハッピーエンドが少ないのが共通点であるのだが、それ以上に「ザ・クレーター」には手塚の”迷い”がクッキリ浮かび上がっている。

 

 それは自身が少年誌で描き続けていくことのジレンマであったり、戸惑いである。

 

 それらの負の要素を負の物語として読者に突きつける手塚。

 

 結果として「ザ・クレーター」はヒット作とはならなかったが、後の「ブラック・ジャック」に通じる短編の面白さを追求した要素も随所に見られ、「B.J」の習作として読むことも可能だし、またそういう視点で読まなくても単純に傑作エピソードが多い短編集である。

 

 手塚が資質として持っていたユーモアは影を潜めており、初めて読んだ人はあまりの毒気に拒否反応を示すかもしれない。しかし、その”暗さ”も元々手塚が持っている資質でありこの時期にその比率が逆転しただけに過ぎないともいえる。

 

 レーサーとマネキン人形、そのライバルレーサーとの歪んだ三角関係が凄まじい”風穴”、人種問題を扱い悲惨なバッドエンディングを見せる”双頭の蛇”、女性の美醜を取り上げた壮絶ホラー”巴の面”、生贄にされた少女が10年間だけ別の人生を歩める”生けにえ”、月にて地球の終わりをたった一人で見つめる男の孤独を描いた”クレーターの男”など禍々しい作品揃いだ。

 

 「よいこのマンガ家」手塚治虫の評価を一変させる傑作!


 

 是非ご一読を。。。!!

 

 

 

 

 さて、次回は”隠れた名作”を取り上げようか。。。

 

 「新撰組」。。。!!

 

 

 

 ではまた次回^^

 

 

スポンサーサイト
コメント

ところで、ロンウッドが不調だった日本公演は何年のどこのホールでのでしたっけ?
2009/06/12(金) 00:10:55 | URL | さゆり☆ #79D/WHSg[ 編集 ]

あれあれあれ;;
どのタイトル見ても知らないものばかり^^;;
まにあっくやなぁwww
2009/06/12(金) 00:31:44 | URL | 元ダンサー #79D/WHSg[ 編集 ]

なんか、このところ、定期的に手塚作品が映画化されるのは、どらちゃの努力のたまもの?
2009/06/12(金) 02:07:30 | URL | んとす #79D/WHSg[ 編集 ]

次回は少女漫画を┃電柱┃_σ)チラッ  
2009/06/12(金) 06:51:15 | URL | あ~たん☆☆ #79D/WHSg[ 編集 ]

実は最近 ブラックジャックがきっかけで手塚作品ちょこっと集めてます*^^*
ちなみに今ハマってるのは ブッダ*^^* なんとなく読んでたら以外にも以外、これが面白い!
2009/06/12(金) 09:58:15 | URL | Bear Pooh #79D/WHSg[ 編集 ]

八角形の館と溶けた男って大好き。映像になってもいいと思うの。クレーターって。
2009/06/12(金) 12:56:41 | URL | 黒猫藝帝 #79D/WHSg[ 編集 ]

さゆりさん<2006年のさいたまスーパーアリーナは。。。。。。
ダンサーさん<これは短編集なので「ザ・クレーター」という言葉を知らないと
          一つもわからないでしょう。。。^-^;
すとん<そうだと嬉しいけど、万に一つもないでしょう。。。(涙)
あ~たん<以前「リボンの騎士」を取り上げたので読んで。
ベアーさん<「ブッダ」は経典通りじゃないドラマ展開が素敵。。。^-^
ゲーテ<その二つも面白いけど俺的には”風穴”と”生けにえ”が圧倒的に好き。
2009/06/12(金) 22:54:47 | URL | drivemycar #79D/WHSg[ 編集 ]

「クレーターの男」で年を重ねた彼の変わりようが小さい頃の私には衝撃的でした。
「新撰組」、楽しみにしてます^^
2009/06/12(金) 22:59:55 | URL | らてぃ #79D/WHSg[ 編集 ]

らてぃさん<手塚ファンですか。。。!?
        小さい頃読んだら衝撃ですよね。
        「新撰組」気合入れてレビューします。。。!  
2009/06/13(土) 14:00:31 | URL | drivemycar #79D/WHSg[ 編集 ]

1冊の中にかなりの作品が入っているのですね。
「巴の面」というホラー作品が面白そうです。
2009/06/14(日) 23:38:23 | URL | nami丸 #79D/WHSg[ 編集 ]

なみちゃん<単行本2巻くらいの分量です。
2009/06/15(月) 00:37:30 | URL | drivemycar #79D/WHSg[ 編集 ]

この辺も読んでないような気が・・・ まだまだです。。。
2009/06/15(月) 20:15:17 | URL | sabaraja #79D/WHSg[ 編集 ]

さばちゃん<マイナーといえばマイナー作品なので。。。^-^;
2009/06/16(火) 00:32:08 | URL | drivemycar #79D/WHSg[ 編集 ]
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。