Drivin' with The Devil

主に自作小説・ロック論・マンガ論などを”狭く深く”書いてます。 どうぞ気軽に楽しんでいってください。。。!! 

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~第3章「闘士のめざめ」~

 

 

「ハッ……!?」
 目が覚めた誠。
 彼は自室のベッドで寝ていました。

 


「ハァハァハァハァッ……!」
 ドゥリムにいた時と同じような息遣いの荒さです。

 


「ハァハァッ……!」
 辺りが真っ暗だったので誠は枕元にいつも置いてある携帯を手に取って時間を確認しました。


 

「えっ……!?」
 思わず驚きの声を上げる誠です。
 それもそのはず時計は誠が明石たちとの飲み会が終わった時間からおよそ2時間くらいしか経っていなかったからです。


 

 移動の時間を考慮に入れたとしても1時間半。
 誠はドゥリムで過ごした時間はおおよそ5時間くらいだと記憶しています。
 この時間の整合性のなさは何を意味するのでしょう?


 

「何だよ…これ……!?」
 誠はドゥリムで味わった屈辱的な気分と同時にドゥリムに対する消せない疑念を感じてしました。

 

 

×××××××

 

 

 次の日、誠は大学を自主休講、つまりズル休みしました。

 


 明石が心配してメールをよこしてくれたのですが、誠は

『ちょっと二日酔いと風邪が重なっちゃったみたいだ…2,3日休むだけだから心配しないでくれ…ありがとう』

というメールを返信した後、携帯の電源を切ってしまいました。

 

 

「ダダンダダンッ……ダダンダダンッ……!」
 誠は仙台市内を走る地下鉄南北線に乗っていました。


 

「………」
 赤い襟付きシャツにブラックジーンズといういでたちで彼は7人がけ椅子の真ん中に陣取ってずっと虚空を見つめていました。


 

「ダダンダダンッ……ダダンダダンッ……!」
 地下鉄特有のエコーのかかった振動音が誠のささくれ立った現在の心境にひどくマッチしているようで時折目を瞑ったりしています。


 

 時刻は11時になろうとしています。
 一番乗客の少ない時間帯であるので誠は真ん中でだらしない格好をして佇むことができています。


 

「カァーッ……!」
 寝入ってしまいそうになると誠は猫の威嚇の鳴き声のような声を上げて防止に努めました。


 

「………」
 その様子を他の乗客は、特に主婦層が多いですが、怪訝な表情で眺めています。
 普段なら見られることをあまり好まない誠なのですが、今日は誰の視線も気にしていないようです。


 

「あれ……??」
 不意に自分の身体を眺めてみた誠はいつの間にか自分の左手首からブレスレットが無くなっていたことに気付きました、

 

 

「次は終点、泉中央…泉中央……!」
「…………」
 終点を告げるアナウンスが聞こえてきても誠は呆けたままでした。


 

「プシューッ……!」
 すぐに地下鉄は終点駅に到着しました。


 

「ガヤガヤ……!」
 続々と乗客が降りていく中で誠だけは大股を広げ、ジーンズのポケットに手を突っ込んだ姿勢でいました。


 

「…………」
 誠がボーッとしていると、
「お客様……!」
と声がしました。
 見ると車掌でした。


 

「お客様、終点でございます…この電車は回送電車となりますのでお降りくださいませ…」
 車掌は事務的ながらも非常に丁寧な物腰で誠を促しました。


 

「ガタッ……!」
 誠は特に気分を害したわけでもないのですが、無言のまま地下鉄を後にしました。

 

 

「クゥーッ……!」
 しばらくぶりに、とはいっても30分弱の時間でしかありませんが、外に出た誠は太陽の眩しさに目を細めながら大きく伸びをしました。


 

 そして手近なベンチに腰を下ろすと、地下鉄の中と同じ状態、大股開きでポケットに手を突っ込んだ風情でまた虚空を見つめ始めました。

 

 

(ちきしょう…ちきしょう……!)
 呆けた状態の中で誠は“ちきしょう”の一語のみを唱え続けていました。
 その他の言葉を吐き出そうとするとドゥリムで味わってきた屈辱を一気に思い出して正常な状態ではいられなかったからです。


 

 誠の頭の中ではおよそ考え得る限りのネガティヴな要素が渦を巻いていました。
 その中でも一番大きな要素は“後悔”でした。


 

 誠は仲間の援護に気づかなかった自分に後悔していました。
 その中でも特に誠は静架が自分をサポートしてくれたことに気づかなかった自分に後悔していました。
 一人の力で巨大ムカデを退治したと驕った気持ちになった自分に後悔していました。
 そして何よりも誠はそんな自分の気持ち・行動を他のメンバーに見透かされてしまったことをひどく後悔していました。


 

「………」
 とてもこんな気持ちのまま学校に行くことはできなかったのです。
 さりとて今の誠は傷を癒す術を知りません。


 

(ちきしょう……!)
 そのこともあっての“ちきしょう”でした。


 

 誠は完全に“思考の袋小路”にはまってしまいました。
 どんなプラス思考をしてみても結局はマイナスで打ち消されてしまう状態です。
 気の置ける人間に相談することすらできないでいます。


 

(ちきしょう………!)
 出口を見つけることができないもどかしさに誠は身悶えしています。


 

「…………」
 考えれば考えるほど身動きが取れなくなってしまうようです。


 

「ブンブンッ……!」
 “このままではいけない”と誠は大きく首を振りました。


 

「スクッ…スタスタ……」
 そしてありったけの力を込めて立ち上がるとフラついた調子で当てもなく歩き出しました。


 

「スタッ…スタッ……」
「ハッ……!!」
 5分ほど歩いた頃でした。
 歩いているうちに何かを思い立ったのでしょう。
 誠の表情に急に光が射したように見えました。


 

「ガサッ……」
 彼はジーンズの後ろポケットに常に入れている財布を取り出して、
「ガサガサ……!」
 キャッシュカードの明細票を確認しました。


 

「………」
 しばらくの間明細票とにらめっこしていた誠でしたが、
「よしっ…!」 
と踵を返すと、
「タッタッタッ……!」
 先程とは雲泥の差である確かな足取りで泉中央駅へと向かいました。

 

 

 

×××××××

 

 

 数時間後。

 


 誠は東京駅にいました。
 彼はあの後急いで仙台駅へと向かい、新幹線の切符を購入して東京へとやってきたのです。


 

「ガヤガヤガヤガヤ……!!」
 仙台駅とは比較にならないくらいの人混み、それに伴う人々の声の多さにむせ返りながらも誠は山手線乗り場へと歩を進めました。

 

 

「ダダンダダンッ……ダダンダダンッ……!」
 数分後山手線内回り電車の中に誠は立っていました。


 

「………」
 これといってすることがない誠はひたすら他の乗客を眺める、所謂“ピープルウォッチング”を行っています。


 

「………」
 決して注意深い方ではない誠ですが、だから余計に人間観察に精を出しているように見えます。

 

 

 改めて見渡すと電車の中は実に奇妙な世界に映っています。


 

 カップルにも拘らず別々にiPodを聴いている高校生たち。
 

 平気で地べたに腰を下ろしている若者たち。


 誠が立っている側の7人掛けシートでは座っている人たちが全員携帯電話でメールに勤しんでいます。


 

 また、車内に響き渡らんばかりの大声で話し続けている中年女性もいれば、野卑な視線でミニスカート姿の女子高生を舐め回している中年男もいます。


 

(ゲェッ……)
 誠は心の中でゑづいていました。
 急に人々を観る行為に嫌悪感を感じ、
「スッ……」
 立ったまま目を閉じ、自分と社会とを遮断しました。

 

 

 それからしばらくして山手線は新宿へと着きました。


 

「タタタッ……!」
 誠の目的地もここだったようで足早にホームを後にして、脱兎のような速さで東口へと向かいます。


 

「フゥ……」
 新宿にあるスタジオアルタの前に来たところで誠はようやく立ち止まり呼吸を整えました。
 普段は昼のバラエティ番組のスタジオとして有名なスタジオですが、誠が来た目的はまったく別でした。


 

(やっぱり……!)
 今日の夕方6時からアルタで今売り出し中の若手モデルのトークイベントが開催されるのです。
 誠は仙台にいる間に携帯サイトでその情報を仕入れていました。


 

 目的はもちろんたった一つ。
 このイベントのメイン出演者である白鳥舞に会うことでした。


 

「タタッ……!」
 誠は手早くチケットを当日券売り場で入手してしばらく出入り口付近に佇んでいました。
 まだ開演には時間がありましたが、土地勘のない場所で闇雲に動くことは彼の良しとすることではありません。


 

 既に熱心なファンが誠と同じように入り口辺りで列を成しています。
 誠はいかにも“オタク”といった風情の連中と自分が同じだと第三者に見られることは嫌でしたが、舞に会うためにはそれもやむなしと割り切っています。


 

「………」
 誠は自分が今ルールを破ろうとしていることに言い様のない罪悪感を抱いていました。
 しかし、それにも増して実際に舞と現実世界で会える喜びの方が大きくなっているのです。
 “規則破り”というスリルが心の奥底にあることも決して否定できません。


 

「フゥーッ……!」
 とにかくこれから数時間後に起こるであろう出会いを前に昂ぶる感情を必死になって押さえつけている自分がいました。


 

(舞さんに会ったら何を話そうか……?ドゥリムのこと……!?いや、あんな殺伐とした世界の話をしたってちっとも楽しくなんかない……!ストレートに『貴女のファンです!』と伝えて、そこから話を展開させよう……!)


 

 頭の中で様々なシミュレーションを行いつつ時間が経つのを待ちわびる誠でした。


 

 

 時計の針がもうじき午後5時を指そうとしていたその時、
「ヤアァァァァァァァッ……!!」
 突然女性の悲鳴が飛び込んできました。

 


「な……!?」
 誠が驚くのと同時に周囲の人々もざわめき出しました。

 


「タタタタッ……!」
 誠は悲鳴が聞こえた方角へ走り出しました。


 

 これまでの引っ込み思案で内向的な性格の誠ならこのような緊迫した場面に遭遇した時、我関せずの態度を取って身を潜めていたことでしょう。
 しかし、誠本人が思うところの“殺伐とした楽しくない世界”での経験が現実世界での彼の成長に繋がっているのです。
 まだ、その部分に完全に自覚的ではありませんが、既に頭で考えるよりも先に行動にを展開している誠がそこにいます。


 

 実沢誠は確実に人間的に成長しているのです。

 

 

「ハッ……!?」
 野次馬が形成する人垣の中を縫って中心部に来た誠の目に飛び込んできたのは若い女性の惨たらしい姿でした。


 

 どこかのOLなのでしょう。
 淡いピンク色の制服が似合うチャーミングな女性です。
 しかしながら、今彼女はその制服の心臓に位置する部分を真っ赤に染めて息も絶え絶えの状態になっています。


 

「大丈夫ですか…!?しっかりしてください…!今救急車を呼びますからね……!」
 誠は大量出血しているOLの身体に触れずに大きな声で生きているかどうか確認しました。
「………」
 女性からの返事はありません。
 完全に意識を失っています。


 

「サッ……」
 誠は女性の右手首を取って脈を確認しました。
「………!!」
 途切れ途切れではありますが脈は確認できました。


 

「救急車は……!?」
 続いて誠は野次馬に呼びかけました。
「呼んだよぉっ……!」
 ちょっと遠くの方から男の声で返事がありました。


 

「ありがとうございました……!」
 誠が感謝の意を口にしたその瞬間、
「ウギャアァァァァァァァァッ……!!」
 今度は男の悲鳴が彼方から飛びこんできたのです。


 

「何っ……!?」
「ガヤガヤガヤ……!」
 再び驚く誠とざわめく群集たち。


 

「タタタッ……」
 断末魔であることは明白の叫び声の方向へ誠が向かいます。


 

「ウワッ……!?」
 しかし、誠は男のもとへ辿り着くことができませんでした。
「フヘへへへへへへ……!」
 誠の進む方向、ちょうどどこかの雑居ビルの踊り場付近に大きなダイバーナイフを持った男が立っていたのです。


 

「キャーッ……!」
「ウワーッ……!」
 群集たちが老若男女問わず逃げ惑います。


 

「フヘへへへへへへ……!」
 男は不気味に笑い続けます。
 薄汚れた青いトレーナーとやはり汚れでどす黒いジーンズに汚れたスニーカーという服装の男は一見して普通ではないことがわかるような雰囲気をしています。
 脂ぎった髪の毛はボサボサで、縁の大きいメガネや、清潔感のかけらもない無精髭。
 身長170cmくらい、体重100kgはあろうかという体躯。
 そのどれもが普通に見えません。


 

「フヘへへヘヘヘヘ……」
 血曇りが付いたダイバーナイフを危なげに弄びながら男は笑い続けています。
(コイツ………)
 誠は自分が男にロックオンされてしまったことを悟っていました。


 

(どうする……!?あのナイフさえ奪えれば……)
「ジリ…ジリリ……」
 誠が相手に気取られないほどの動きで徐々に間合いを詰めていきます。
 気がつけば辺りには人っ子一人おらず、誠と賊が向かい合っている状態です。
 自分の遥か後ろの方で人垣が出来上がっているのを彼は気配で感じていました。


 

「………!?」
 賊が立っている場所から少し奥まった所でスーツ姿の男性が倒れているのを誠は認めました。
(まだ生きてるのか……!?)
 男性の安否を気遣う誠。


 

「シュッ……!」
 しかしながら、賊がダイバーナイフで威嚇するため容易に近づくことができません。
 更には奥に誰もいない様子で男性は放り出された状態なのです。


 

(クソッ……!)
 誠が焦れ出しました。
 すると、
「ヒャヒャヒャッ……!」
 男の体躯からは考えられない甲高く、不気味な笑い声を上げながら賊は男性の下へ行きました。


 

「えっ……!?」
 誠がチャンスとばかりに一気に間合いを詰めようとしたその瞬間、
「ゴガボギィッ……!」
 異様な音が聞こえてきました。


 

 賊はダイバーナイフと自分の腕力を使ってあろうことか男性の左腕を捥いだのです。
 異常な蛮行は目にも止まらぬ速さで行われてしまいました。


 

「ゲッ……!?」
 その行動を察知した誠は一瞬躊躇し、動きを止めてしまいました。
 それは人間として当然の行動のように思えます。


 

 誠は左腕を捥がれた男性が声一つ上げなかったことと、近づいてみて初めてわかった廊下をつたう夥しい量の血を見て男性が死亡していることを理解せざるを得ませんでした。

 

 

(こいつ……!!)
 人外の行いをし続ける賊に対して沸き起こる憤怒を誠は抑えることができないでいます。
 その状況が賊に付け入る隙を与えてしまったのかもしれません。

 


「ヒャハッ……!」
「ブウゥインッ……!!」
 男は捥いだ手を誠めがけて投げつけました。


 

「アッ……!?」
 あまりにも一瞬のことだったので誠は避けられませんでした。
「バゴッ……!」
 腕はブーメランのように回転して誠の左頬に当たりました。


 

「ブゲッ……!」
 カウンターパンチを食らったのと同じ衝撃が誠の顔面に走ります。
「グラッ……ズダッ……!」
 倒れそうになったのを必死に踏ん張って立っていることに成功した誠。


 

 しかし、喜びもつかの間、
「わっ………!?」
「ギュウンッ……!!」
 何と賊はわずかな時間でもう片方の腕も捥いでしまっていたのです。
 そして賊はその腕を棍棒代わりにして誠に襲いかかってきました。


 

「ササッ……!」
 攻撃をかわすべく右によける誠でしたが、
「ヒャヤヤ……!」
 賊は器用について来ました。


 

(マジかよ……!?)
 思わず心の中も乱暴な言葉使いになります。
「バゴオォッ……!」
 振り上げた捥ぎ腕が今度は誠の腹部を捉えました。
「グブゥッ……」
 腹中に響く鈍い痛みと苦しさで誠が呻きます。
「ブウゥゥゥンッ……!」
 賊は尚も捥ぎ腕を振りかざしてきます。


 

「サッ……!」
 呻きながらも誠はすんでのところで腕をかわすことができました。
「ゴボギゴボゴゴボギ……!」
 勢いがついた捥ぎ腕は不快な折れ音を立ててビルの壁に当たり、崩れました。
「ヒャッ……!壊れたっ……!ヒャッ……!」
 怪男が初めて言葉らしきものを発しました。


 

「ブチィッ……!」
 その“壊れた”というセンテンスが誠の心の中の箍を外したことに賊が気づくはずもありません。
「グゥッ……!」
「スタッ……!」
 誠は痛む腹部を押さえながら、呻きながらも立ち上がりました。


 

「………立ったっ………!」
 完全に弛緩した表情で怪男が甲高い声を上げました。
「ダダダッ……!」
 無言で走り出す誠。


 

「ヒャッ……!?」
「“ヒャッ”じゃねぇよっ……!!」
「ビュンッ……!」
「ボッゴオオオオォッ……!」
「ひゃぶっ……!」
「バダゴォンッ……!」
 走り出した誠はそのままのスピードを維持して跳び蹴りを賊に見舞いました。
 これまで口にしたことのない乱暴な口調で…
 蹴りは怪男の横っ面を正確に捉えました。
 屠殺場の豚のような悲鳴を上げた賊は倒れ、さっきの捥ぎ腕と同じように壁に叩きつけられたのです。


 

「ブギャッ……!ブギャアッ……!」
 口の中が切れたらしく止め処もなく溢れる血に咽ながら男はもがいています。
「人を二人も傷つけて…そのうち一人は殺しておいて……!その割には痛がるし、人並みに血も流すんだなぁ……!」
 鬼のような目をした誠が鬼のような言葉を口にしながら男の眼前に立ちました。
 誠の勝利はもはや明白でした。


 

「ブブッ……!?」
「うるせぇっ…!その口閉じやがれっ……!」
 誠は蹲っている賊に向かって下段回し蹴りの要領で蹴りを出しました。


 

「ボッゴオッ……!」
 骨が折れた時のみに聞かれる鈍い音が振動と共に誠の足に伝わりました。
「ギャハッ……!ギャバパッ……!」
 怪男は顎の骨が砕けて外れてしまったようです。
 ダランとだらしなく下顎が垂れています。


 

「お前なんか生きてる価値ねぇよ……!俺があっちで殺してしまった彼……北浜さんの方が……ちきしょう……!」
 それまで心の中に溜め込んでいたマイナスの事柄が一気に放出されてしまいました。


 

「ウオォォォォーッ……!」
 誠の叫び声は飢えた狼さながらです。
「ヅゴッ…!バッゴォッ……!」
 苦しみにもがく怪男に誠は無慈悲な追い打ちを浴びせます。


 

「ッゲゲゲッ……ガギャァッ……!」
 賊の悲鳴は断末魔に変わりつつあります。
「ガシィッ…!」


 

「もうよせっ……!君まで殺人犯になってしまうぞっ……!」
 第三者の言葉と誠の暴行を止める力が出てきました。
 それは事件を聞きつけ駆けつけた警官隊でした。


 

「放せよっ…!放せって言ってんだろうっ……!」
 誠は絶叫しながら抵抗します。
 その目には涙が溢れていました。

 

 

×××××××

 

 

「………」
 数時間後、誠は新宿駅東口付近を当てもなく彷徨っていました。
 彼は猟奇的通り魔を逮捕する力になったことで警察から感謝の言葉を貰いましたが、他方で賊を取り押さえる際の行き過ぎた暴力を咎められ、厳重注意を受けてから開放されたのです。


 

「ピタッ……」
 もうすっかり暗くなり、人工的な照明が華やかな空間を作り上げている街の鏡張りになっているアパレルショップの前で誠は立ち止まりました。


 

「うわぁ……!」
 着ていた赤いシャツが血でどす黒く染まっていました。
 誠自身も身体に返り血を浴びており、およそまともな人間に見えない風体でした。


 

(警察も顔くらい拭いてくれりゃイイのに……)
「ゴシゴシ……」
 誠はシャツで乱暴に顔を拭くと、その過程で腕時計を見ました。
 時刻は間もなく21:00になろうとしています。
 新幹線の最終にギリギリ間に合うくらいの時間です。


 

「帰ろう…!」
「タタタタッ……!」
 誠は駅を目指して狂ったように走り出しました。


 

(そういや舞さんに……会えなかった……な……)

 

 

「スッ……」
 誠が去った後を見送りながら小さい人影が踵を返して同じく去って行ったのを誠は知る由もありません。


 

 

×××××××

 

 

 誠は帰りの新幹線の中で泥のように寝入っていました。


 

「スゥ………」
 寝息すら小さく消え入りそうな状態です。
 それはドゥリムへの誘いでもあります……

 

 

「スタッ……」
 やはりいつものように気が付いたら誠はドゥリムの草原にいました。


 

「バタッ……!」
 夕方の出来事をこちらでも引きずっているのは明らかで、歩くことを早々に打ち切った誠はその場にへたり込むようにして座っていました。
 このような時は普段心の中に押し込めていた疑問が湧き上がってくる時でもあります。
 そして、大概その疑問は大きく、本質的なもので解決が困難なものであるのです。


 

(考えてみりゃ俺……まともに身体を休めていないよな……!?こっちで闘い、あっちで生活して……俺はいつ休んでいるんだよ……!?)
 熟考するのが怖い誠。


 

(そして……やっぱりこの世界は本当に存在するんだろうか……!?)
 より熟考するのが怖い疑問へとブチ当たります。


 

(考えてみれば……この世界はおかしいことだらけだ……!例えば初めて僕がここに来た時は町はおろか人っ子一人、動物や虫すらいなかったのにいつの間にかそれが全部存在している……で、不思議なことに皆日本語を話すし……それにここに住んでいる人たちは普段何をやっている人たちなんだ……!?)


 

 一度疑問が噴出するとそれは止め処もない広がりを見せて、誠をひどく不安な状態に陥らせます。


 

(ブレスレットだって無くなっちまった……)
 “止め処もない広がり”はある決定的な結論を導き出すに至ります。
 それは“ドゥリムランドゥ”という世界の実在の根幹を揺るがすものでした。


 

(あぁ……!!僕はとんでもないことに気がついてしまったぞ……!!僕が寝入ったのと同じ時間に僕と闘った北浜さん、そして僕のチームのメンバーがどうして一緒にいれるんだ……!?人それぞれ寝入る時間は違うじゃないかっ……!!何てこった……)


 

 ここまで熟考して誠が出した結論は、
(ここは僕の脳内世界なんだ……僕は何かしらの病気になってしまったんだな……)
 そして彼は一つの行動を起こす決意をしました。


 

(僕の世界ならこんな世界いらない……!壊してやる、全部……!)


 

「スゥーッ……」
 誠は瞳を閉じゆっくりと念を入れました。
「ブワンッ……!」
 彼の専用剣が現れました。


 

 カッと目を見開いた誠は、
「ガシィッ……!」
 勢いよく宙に浮かんだ剣を握ると、
「ウオリャアァァァァァァァッ……!」
「ヅダダダダッ……!」
 けたたましい叫び声を上げ、剣を乱暴に振りながら走り出しました。


 

 その表情に彼の本質である優しさはどこにも見ることができません。
 憎しみだけを宿したその瞳には赤黒い炎が盛っているようにも見えました。


 

「ダダダダダダッ……!」
 今、誠の心の中には具体的に何かをやろうという緻密な気持ちはありません。
 あるのはただ“ドゥリムランドゥの破壊”のみ。
 それを完遂するためなら誠は町だって壊すし、動物も殺すし、住民も平気で殺すことでしょう。
 瞳の奥の赤黒い炎はそのことの証明でもあります。


 

「………!!」
 視界に町並みが入ってきました。


 

「ジャキィッ……!」
 剣の動きを止めて構えながら走っていたその瞬間、
「ビュンッ……!」
「ブッサァッ……!!」
 誠の足元の方で音がしました。


 

「………!?」
 驚いた誠が急停止すると、足元からわずか数cmの所に黄色いナイフが数本突き立てられていました。
「これは……!?」
 誠が困惑するのと同時でした。


 

「誠お兄ちゃん、バカなことしないでよぉっ……!」
 誠から見て左前の方角に静架が立っていました。
 顔を涙でクシャクシャにして…


 

「静架ちゃん……」
「ドゥリムを滅ぼそうなんてバカなことしたら……お兄ちゃん死んじゃうよぉっ…・・・!」
「………」
 少女の切なる叫びに誠の邪念は一気に冷めていきます。


 

「そうだっ…!いつまで同じ所で堂々巡りしてやがるんだっ……!」
 今度は右前の方角から声がしました。
 射るような口調で語ってきたのは利樹でした。


 

「堂々巡り……!?」
「そうだっ!お前がしていることは堂々巡りに過ぎないんだよっ…!しかも、自己完結していやがるから性質が悪いんだっ……!」
 利樹は次々と厳しい言葉を強い調子で誠に浴びせていきます。


 

「誠君、ここは君の世界であることは確かだ。けど、“君だけの世界”では決してないんだよ……」
「中山さん……」
 利樹の後ろから徹郎が現れました。


 

「何にも変わらないんだ、あっちの世界とね……」
「…………」
 誠はガックリと膝をつきます。


 

「今の実沢さんはあの通り魔と全く同じ……」
「エッ……!?」
 膝をついた視線の真正面先に舞がいました。


 

「アイツと僕が……同じ……!?」
 愕然とした様子で誠が呟きます。
 舞の一言はショッキングでしたが、それ以上に舞があの場で誠の存在を認めていたのだろうかと思うと誠はとても恥ずかしい心持ちになっていました。


 

「僕を……見たんですか……?」
「私、ルール破りはしない…騒ぎは知ってたけど貴方が通り魔を撃退したって話はここで聞いたの……」
「ここで……!?」


 

 誠は何が何だかわけがわからなくなってきました。
 頭の中は淀んだ極彩色に包まれており、何か細かい思考をしようと思っても極彩色がもやとなって考えを妨げるのです。


 

「……………」
 理性的な考え、道徳的な考えができなくなってきていることを自覚する誠。
 それはとても彼をひどく不安にさせ、早く元の優しく誠実な人柄に戻りたいともがきます。
 “自らの心の安定のためなら何をしても構わない”という極めてシンプルで短絡的な思考が彼の中で完成されていきます。


 

「……………」
 今、こういう状態で苦痛を味わい続けるのなら目の前の物を全て破壊してやりたいとさえ思うのです。
 仲間さえも消してしまいたいという感情が湧きあがってくるのです…


 

(本当だ……俺もあのケダモノと何ら変わりないどうしようもない人間なんだな……)


 

「クッ………」
 誠の口から心からの呻きが漏れます。
 それはまるで短絡的な思考が自分の内なる部分へと向いたスイッチのようでした。

 

「グイッ……!」
 誠は不意に地面に刺していた剣を取り出しました。

 


「アッ…!!」
「えっ…!!」
「バカめっ…!!」
「誠お兄ちゃんっ…!!」
 4人の仲間達が誠の動作を見て一様に驚き、狼狽しました。
 誠は自害するべく剣を自らの首、右の頚動脈付近に突き立てたのです。


 

(これで……いいんだ……)
 誠は涙顔でしたが笑顔も戻っていました。
(さよう……な……ら……)
 何故か彼の脳裏には純子の姿が浮かんでいました。


 

「スッ……」
 誠が刀を引こうとした瞬間、
「ビガアァァァッ……!!」
 とてつもないスピードで黒雲が現れ、それ以上のスピードで雷鳴が轟きました。


 

「ビッシュウゥゥゥゥッ……!!」
 稲妻は剣のみを正確に捉えて、弾き飛ばすことに成功しました。
「な……!?!?」
 安堵の表情を浮かべる4人とは裏腹に誠は狼狽しています。


 

『誠よ……!俺がお前をドゥリムへ召喚したのは死んでもらうためなんかじゃないんだぞ、どこまで勘違いすれば気が済むんだ…!』
 “謎の声”の仕業だったのです。


 

「だって……僕が生きてたら皆が……迷惑するし……僕は嫌われてしまったろうし……」
『それが“自分勝手”だって言うんだよっ…!』
「僕に言わせれば勝手にこの世界に連れてきたお前の方が…お前の方が……よっぽど自分勝手だよぉっ…!」
 誠は初めて自分の“内なる叫び”をドゥリムランドゥでぶつけたような気がしました。
 いや、ドゥリムだけではありません。
 彼は実に久しぶりに自分の思うところを包み隠さず、正直に、自分の言葉で叫んだような感覚を抱きました。
 もしかしたら無邪気な子供時代以来のことだったかもしれません。


 

『ふむ……』
 “謎の声”もどこか神妙な感じで誠の声に耳を傾けます。


 

「僕は強くなりたいっ…!僕はもっと自分を出したいっ…!僕はもっと他人に認められたいっ…!けど、けど…怖いんだ……自分を表現して……どんな反応が返ってくるか…嫌われたりしないかとか……いつもそんなことばかり思っていて…本当に…怖いんだ……」
 いつの間にか誠の独白は誠がドゥリムに対して抱いていた疑問からズレているように見受けられます。
 しかし、“謎の声”も4人の仲間も神妙な面持ちで誠の叫びを聞いています。


 

「別にドゥリムが嫌いなわけじゃない……怪物たちと闘うのはそりゃ怖いけど、問題はそういうことじゃないんだ……北浜さんと闘った時、あれはとても怖かった……まるで僕の頭の中を見透かすような態度で迫ってきた北浜さんが、本当に怖かった……」
 涙声になる誠。
 既に泣いていた静架が、更に止め処もなく涙を流しています。


 

「現実世界もそう…特に僕に敵意を剥き出しにしてくる人なんて誰もいないのに……“いつか誰かが僕を責める”っていう感覚が抜けない……けど、こんなこと誰にも、誰にも言うことなんてできやしないから、今までずっとずっと“表に出さないように”って押し込めてきたんだ……僕が自分を嫌いで、他人も嫌いだってことをね……」
 誠は時々嗚咽を交えながらも、自分の心の声を周りに聞いて欲しくて、必死で訴え続けました。


 

「僕は……もっと…自分に素直に生きたい……自分を愛して……人を愛したいんだ…」
 そう言い終えると誠は地面に臥して、
「ワアァァァァァァァァッ……!」
 と泣き崩れました。


 

「…………」
 誰も皆無言でした。
 “謎の声”ですら口を挿みません。

 そうして十数分という時間が流れていったのです…

 

 

「ウック、ウック、ウック……」
 誠はまだ泣いていました。


 

「サッ……」
 震える誠の肩に誰かが手を置きました。
「ハッ……!?」
 誠はその感触に気づきましたが、すぐに顔を上げることはできませんでした。


 

「サッ……」
「サッ……」
 更に2人が後に続き、3人が誠の肩に手を差し伸べていました。
「フッ……」
 誠が起き上がると周りに徹郎と舞、そして静架がいました。
 彼の肩に手を置いていたのは仲間3人だったのです。


 

「中山さん……白鳥さんに……静架ちゃん……」
「全部吐き出した……?」
 舞が声をかけてきました。
 敬語でないところに誠は軽く驚いた様子でした。


 

「は…はい……」
 バツが悪そうに涙を拭きながら答える誠です。


 

「今の気分はどうだい…?」
 徹郎が今度は語りかけてきます。
 強面の顔なのですが笑顔はとても人なつこいのです。


 

「何だか……胸に痞えてたのが晴れたような気がします……」
「そうか……この世界のことは……?」
「それも……未だ釈然としないところは正直ありますよ……でも、ここが僕一人の世界じゃないってことは理解できましたし、納得もしました……」
「うん……誠君、この世界に来た順番からいくと君が一番浅い。だからこの世界でまだ出会って間もない俺たちとチームを組んでいくことにまだ慣れていないだろうことは十分理解できる……けれどもこれだけはわかっていてほしい……」
「はい……!?」


 

「俺たちは偶然出会ったわけでも、偶然ドゥリムランドゥにいるわけでもないってことだよ…全ては“必然”なんだ……」
「必然……!?」
「そうだ、“必然”だ…そしてドゥリムでの“必然”は現実社会の“必然”でもあるんだよ。」
「現実でも……?」
「前に“声”から聞いているはずだよ…君は両方の世界に身を委ねつつ自分の足で動けば良いんだ……!それだけだ…!」
 徹郎はそこまで言うと誠の肩に乗せていた手にゆっくりと力を込めました。


 

「共に生きるぞ…!」
「ハイッ…!」
 徹郎の凛々しさに誠も返事に覇気を込めます。


 

「スッ……」
 徹郎は嬉しそうな表情を浮かべ、手を放すと利樹の方へと歩いて行きました。

「さっきはひどいこと言ってごめんなさいね……」
 今度は舞が声をかけてきます。


 

「いや……僕が悪かったんです……」
「私にはわかる……ううん、あなたの周りにいる人は皆わかっていると思うわ、貴方がとんでもないパワーを持った人だってことを……」
「パワー……!?僕が……!?」
「そうよ…貴方の能力(ちから)が多くの人を救うほどの……」


 

「大げさですよ、そんな……!」
「人は誰でもそういう能力を持っているの……ただ、それに気づかない人や気づいていても磨かない人が多いだけ……」
「…………」
 舞の醸し出す健康的だけど、どこか妖しさを秘めた言葉と色気に誠は圧倒されています。


 

「頑張りましょ……」
「ハイ……」
 舞も哲郎同様、手を放し利樹の方へ、正確に言うと徹郎の隣へ向かいました。

 

 

「誠お兄ちゃん……」
 静架でした。
 彼女はまだ目に涙を浮かべており、笑顔は見られません。


 

「静架ちゃん、ごめんね……僕は弱い男なんだよ……!」
「違うよっ…!」
「ん……!?」
「静架は悲しくて泣いているんじゃないよ…!さっきまではそうだったけどね…」
「えっ……!?」


 

「今は嬉しくて泣いているんだよっ……!やっと誠お兄ちゃんが本当の気持ちを言ってくれたから……!」
「本当の気持ち……?」
「うんっ…!」
 静架が泣き笑いながら応えます。
 その笑顔はあまりに無垢で、舞とは違う女性のパワーにやはり圧倒される誠でした。


 

「静架ちゃん、ありがとうね……!」
「うんっ……あっ、誠お兄ちゃんは弱くなんかないよ……!ドゥリム一、世界一強いお兄ちゃんだよっ…!」
 そこまで言うと静架はお転婆娘の本領を発揮し、ピョンピョン跳ねながら徹郎の下へと向かいました。

 

 

「スクッ……」
 とうに泣き止んだ誠は、ある確実な意志を持って立ち上がりました。


「スウーッ……!」
 そして大きく深呼吸を一つすると目を閉じてドゥリムの世界を味わいました。


 

 空気の味を。
 風の味を。
 踏みしめた大地の感触を。

 

 

 心の中を支配していた極彩色のもやが晴れていく感覚を誠は確かに感じていました。
 誠にドゥリムランドゥで生きていく“闘士”としての自我が目覚めた瞬間です。

 

 

「スタスタッ……」
 すると目を開けて、真っ直ぐに仲間たちが待つ場所へと歩み出しました。
 それまではどこか目を逸らしがちで仲間と接していた誠でしたが、今はキッと相手の目を見ることができます。

 


「………」
 一人だけ傍に寄って来なかった利樹の刺すような視線も見据えることができます。


 

「面倒くさい野郎だな、お前って……」
 誠が利樹の前にピタリと止まった瞬間に利樹は厳しい言葉をぶつけてきます。
「そうですね……」
 誠は反省した様子で、さりとて決して自己を卑下するわけでもなく冷静に受け答えしました。


 

「俺はお前みたいな野郎が大嫌いだっ……!」
 直接的な言葉をビュンビュンぶつけてきます。
 その様子を見た静架が利樹に何か言おうとしましたが、徹郎がそれを制しました。


 

「どしてよっ……!?」
「男同士のことだからだ……」
「フンだっ……!」
 静架はむくれてしまいました。


 

「俺もさっきでは自分が嫌いでしたよ…今でもいくらかはそうですね……」
「ケッ……何が言いたい……!?」
「それでも僕は僕でしかないってことですよ…!」
「ハッ、哲学だねぇ…!」


 

「僕もあなたのような人間は大嫌いです」
「何だとっ……!」
 思わぬ誠の一言に利樹が身構えます。


 

「シュッ……!」
「パッチィッ……!」
 利樹は怒りに任せて右のジャブを繰り出しました。
 無論本気ではありませんでしたが、当たればそこそこ痛みを感じる程度の力は込めていました。
 しかしながら誠は対角線上に開いた右手を差し出し、いとも簡単に利樹の拳を受け止めました。


 

「な……てめぇ……!」
「パンチ一つにも性格が出ますね……」
「は…放せよ……!」

 


「こんなことしないと約束してくれれば……」
「ギリギリギリ……」
 そう言いつつ誠は掴んだ利樹の右拳に力を加えます。


 

「ガッ……!」
 その力は決して利樹の骨を砕こうというものではありませんが、ある程度のダメージを与えるには十分なものです。
「パッ……!」
 頃合いを見て誠が手を放しました。


 

「クソッ……!」
 バランスを崩して転びそうになった利樹が吐き捨てます。


 

「あなたは僕と違ってここでの目的、チームの意味を知っているんでしょう…?だったらつまらないいがみ合いは止めましょう……」
「フンッ……」
 利樹は無言で誠と距離を取りました。


 

「もしかしたら僕らは仲良くなれるかもしれませんよ……」
 利樹に聞こえるかどうかの小声で誠は呟きました。

 

 

『結構だ…!どうやら本格的にチームとして始動できそうだな……!』
 “謎の声”が再び口を開きました。


 

(知りたいよ、ここで僕が何をするべきなのかを……!)
 精神的に一回り大きくなった、闘士としての自我を見せ始めた誠は声の言葉に聞き入りました。

 

 

『今から君たちに“ドゥリムランドゥとは何か?”、“君たちを召喚した理由”、“君たちがドゥリムで何をするのか?”を簡潔にわかりやすく説明する……!一度しか話さない、だからしっかり自分の中で反芻してほしい……』


 

「中山さんも真の目的は知らなかったんですか…?」
 小声で誠が尋ねます。


 

「そうだな……こっちに来てから無我夢中に動いていたからな……」
 誠は軽く驚きました。


 

 他のメンバーも誠同様、何も知らずにドゥリムで過ごしてきたのでしょう。
 静架のような無邪気な娘が順応していくのは何となくわかっても、大人であるほかのメンバーがここまで何も知らない状態で平然とドゥリムにいたことはやはり誠にとっては考えられないことです。


 

 若いのにどこか達観したような落ち着きを見せる舞。
 自己顕示欲の塊のような利樹。
 そして人生経験が豊富な徹郎。
 仲間はそれぞれの人間的特性を活かして異世界を生き抜いてきたのです。
 今更ながら自分がどれだけ自分勝手な人間だったかを反省する誠でした。

 

 

『誠、おしゃべりはそのくらいにしとくんだ……』
「はい……」


 

『まず、ドゥリムランドゥのことを話する前に私のことを話しておくべきだな……私はドゥリムの中で生きている存在でもあり、君たちの言うところの現実社会で生きている存在でもある……』


 

「はぁ……!?何わけのわかんねぇこと言ってるんだ……!?」
 さっきの件で機嫌の悪い利樹が憎々しげな様子で応えます。


 

『………私は“世界の一部”なんだよ……いや、“地球の一部”と言った方がわかりやすいかもしれないな………』
「地球の一部……」
「神様か何かだぁっ……!」
 誠に続いて、いつの間にか彼の隣にチョコンと佇んでいた静架が声を上げました。
 誠は静架の考えをシンプル過ぎると思いながらも、どこか説得力を思っていました。


 

『“地球の一部”としか説明の仕様がないことをお詫びしながら話を先に進めたい…“ドゥリムランドゥ”についてだ……名前が示す通り“ドゥリムランドゥ”は“夢の世界”だ…』
「やっぱりそうなのね…!」


 

 突然舞が大声を上げたので他のメンバーは驚きました。
 誠はこの時舞のことを初めて自分と同年代の“女の子”という意識を持ったのです。
 人気モデルでも、達観した闘士でもなく一人の女の子として…

 

 

『ただ、“夢”といっても君たちの思うところの“夢”の概念とは少々違うんだ…・・・かと言って天国や地獄という完全別世界の話でもない……』
 “謎の声”が暗に“天国と地獄”の存在を認める発言をしたことにチームの誰もが驚きで声を失いました。


 

『君たちが普段見る“夢”というのはあくまで君たち各々のものに過ぎない。だからそれは“世界”とはいえない……あえて無理をして言うなら“空間”だな……』
「ギリギリ……」
 難しい、観念的な話が続いているので利樹が焦れています。


 

「静かに……」
 舞が彼を諌めます。
 すると利樹はおとなしくなるのです。


 

「………」
 その光景を見ていた誠は何だか利樹のことが羨ましく思っていることに気づきました…
「………」
 しかし、その誠の様子を不機嫌そうに見ている静架には気づくことはありませんでした。

 

『実は人間には、いや生きとし生けるもの全てには所謂現実社会とは別に共有する世界があるんだ……それがドゥリムだ……!寝ている時にしか共有できない世界なので“ドゥリムランド”と呼ばれている……』

 


「ちょっと質問していいですか…?」
『一度だけだぞ……!』


 

「はい……そのドゥリムランドゥですが、どうして僕達は本来なら寝る時間も生活もバラバラなのに、今こうして一緒にいられるのですか…?そして寝ている時間とここで過ごす時間が同じでないのは何故……?そしてここの住民は一体何者ですか……?そして誰もが皆日本語を話すのは何故……?」
『おいおい、一度にいくつも質問し過ぎだっ……!そんなに沢山一度に答えられないぞ!』


 

「すいません……」
『まぁ、不安は全部消えていないってことだな……それもやむなしだろう……』
 “謎の声”の態度は上から目線ではありますが、以前のような高圧的なものではなくなってきているようです…


 

『悪いけど全部には答えられないぞ……!一つ二つの秘密があった方が人生を生きていくスパイスになるものなんだ……』
「クスッ……!」
 声の言葉に舞が笑いました。

 

 

『睡眠時間と活動時間の話だがな、もともと関連性なんかないんだ……それは誠、お前が関連性があると勝手に思い込んでいるだけの話なんだ……』
「は……!?」
 誠は呆気に取られてしまいました。


 

『ドゥリムの入り時間についてだって同じだ。誰がいつ、どこで、どんな時に寝ようがここで時間を共有するタイミングは全く一緒なんだ。そこに関連性はないんだよ……』
「…ということはここでの共有時間だけがドゥリムにとっては大事なこと…?」


 

『その通り……だからつまらないことにいつまでも頭を使うんじゃない……』
「ハハハッ……」
 誠は何だかとてもおかしくなって笑い声を上げてしまいました。


 

『話が逸れたな……戻そう……“ドゥリムランドゥ”は寝ている時しか来れない世界だが、現実社会と地続きなんだ……だから、ここで負ったダメージはそのまま向こうに持ち越されるし、ここで死ねば向こうでも死ぬ……』


 

「ゴクリ……」
 誠は自分が負った傷や、ここで殺めてしまった北浜のことを思い出して、唾を飲み込みました。
 

 

 どんなに必然的な運命だったとはいえ、人を殺してしまったことに変わりはありません。
 そのことは楔となって誠の胸に刺さったままです。
 一生取れることはないでしょう。


 

『地続きってことはつまるところ“同じ世界”ってことなんだよ…!まぁ、これはこれからここで生きていくことでおいおいわかっていくと思うぞ…!ただ、誠が再三気にしていたような“脳内世界”ではないんだ……こんなところで良いか……?』
「コクッ……!」
 皆、“声”が先般言った通り言葉を反芻しながら頷きました。

 

 

『うんうん……次にこの世界の住民のことだが、この世界の住民はあくまでこの世界の住民なんだ……抽象的でわかり辛いだろうがな……かつて現実社会にいたとか、こっちの住民が現実世界へ行くといったことは一切ない。そういうことだ……』
 確かに抽象的な“謎の声”の説明でしたが、誠はじめ他のメンバーも彼の言葉を受け入れることで疑問を解消しているように見られます。


 

『ここでは“言葉”は一切関係ない。君たちは全員日本人だから当然日本語を話しているだろうが、俺や住民、それに他の国の人々はそれを日本語とは認識していないんだ…わかるかい……?』
「その国の言葉として聞こえてるんだね……!」
 快活な口調で静架が応えました。


 

『うん、そういうことだ……!この世界そのものに君たちが言うところの“翻訳システム”が存在するんだ。俺はどの国語にも属さない言葉を話すのだが、それが君たちには日本語として届いている……』

 少しずつですが、ドゥリムのことが明らかになってきたことでチームの面々の表情に強張りがなくなっていくのがわかります。
 それを知ってか知らずか“声”は淡々と続けます。

 

 

『さて、次へ移ろう……君たちを召喚した理由だ……!何といっても一番大きな理由は君たちの肉体的ポテンシャルの高さにある……!』


「ポテンシャルねぇ……」
 とてもシニカルな調子で利樹が口を挿みました。
 社会人スプリンターとして活躍する彼は自分の肉体に絶対的自信を持っていました。


 

『そう……更にその肉体を支える精神力の強さ……そこに俺は目を付けて召喚したのだ。君たちの主観的な意見は一切いらない…!俺が君たちを客観的に判断して召喚した、そういうことだ……!』


「………」
 舞は自身の精神力を高く評価されたことは素直に喜びましたが、自分の肉体にどんな能力があるのかはまだ自覚できないでいました。
 けれども、自分とは逆の身体能力が高く、精神力が弱く見えた誠があれだけ短期間で成長した事実を目の当たりにすると、自分の能力がどこまで上昇するかとてもワクワクした気持ちになっているのです。

 

 

『そして肝心の話にいこう……!君たちにここドゥリムランドゥでやっていただくことを話そう……!』


 

 いよいよ話は核心へ入っていきます。
 チームのメンバーの表情も緊張でキリリと引き締まりました。

 

『君たちの任務は“敵からドゥリムランドゥを守る”ことだ……!』
 “声”は一際大きな声で言い放ちました。

 


「敵から……守るだって……?」
「もしかしてその“敵”と俺たちはもう闘っているんじゃないか……!?」
 哲郎が極めて冷静な分析をします。


 

「ウイ牛……」
「こないだのムカデ……」
 メンバーも徹郎の言葉が何を意味するのか悟ったようで口々に自分が闘ってきた怪物の名を挙げていきます。


 

『さすが徹郎……君の言う通り……あのような化け物じみた生物はドゥリムには存在しないんだよ……!』
「じゃあ、一体誰が送り込んだんだ……?」
 誠の言葉です。


 

『うむ……ここから話すことはあまりにも現実離れしていることだから、笑わずに真剣に聞いてほしい…いいな……?』
 “声”の神妙な調子にメンバーも襟を正します。


 

『さっき俺は“地球の一部”と言ったことを覚えているよな…?…ということは俺は常に地球の内側と外側を見つめているんだ。それが俺の役割なんだ……』
「フゥーッ……」
 緊張で誠がため息をつきます。


 

『俺も具体的な場所がどこかまではわからないのだが、地球以外の天体から地球へ向けて侵略を試みている連中がいる……』
「エッ……!?」
「………!?」
「宇宙人だぁっ……!」
 驚きで声もままならない4人をよそに静架が嬉しそうに声を上げました。


 

『地球外生命体ってやつだな……もちろん奴らとは会話などできないし、目的なんかも一切不明だ……しかし、奴らが地球に対して何らかの圧力をかけてきていることだけは確実なことなんだよ……!』
「…………」
 およそ荒唐無稽な話は予想できましたが、これはあまりにも荒唐無稽過ぎます。
 “宇宙人”というのは映画や漫画の世界の話です。
 しかし、その荒唐無稽な生命体が実在して、地球にやって来ているということにチームメンバーは戦慄を覚えました。


 

『生命体が圧力をかける場所に選んだのがドゥリムランドゥなんだよ……俺は“地球の番人”としてみすみすドゥリムが蹂躙されるのを黙って見ているわけにはいかない……さりとてドゥリムの住民だけで闘うのにはあまりにも荷が重い……だから君たちをはじめとする精鋭を召喚したのだ……』
「なるほど……すると俺たちだけが集められたわけじゃないんだな……?」
 利樹が初めて疑問をぶつけました。


 

『そうだ……君たちの他に5人1組のチームを9つ編成している……』
「50人……」
「他のチームも私たちと同じような方法で召喚したんですね……?」
 舞も疑問をぶつけ始めました。


 

「うむ……各々召喚して人間同士で対決させ、勝った方を闘士として採用したのだ…」
「グフッ……」
 “声”の非常なる采配に誠が咳き込みました。


 

「君たちに同じ人間と闘ってもらい、結果的に殺させたことはお詫びしてもし足りない気持ちでいっぱいだ……けれども私は“番人”として非情にならざるを得なかった……」
「………」


 

 誠はここで初めて“声”の苦悩を知りました。
 自分が“人殺し”という贖罪を背負ったことは悲しく、苦しいことでしたが地球を掌る存在であろう“声”が自らの財産である人間を意識的に闘わせたことの苦しさを知ったことで少し救われた気分になりました。

 

 

『君たちチームの仲間同士はもちろんのこと、他のチーム、そしてドゥリムの住民達と連携を取って、地球外生命体の脅威からドゥリムランドゥを守ってほしいのだ……!是非お願いしたい……』
「ヒューッ……!」


 

 “謎の声”の説明が一通り終了しました。
 皆黙りこくったままです。
 吹き荒ぶ風の音だけが響き渡ります。


 

「………僕はやります………!」
 一番最初に口を開いたのは誠でした。


 

「おぉっ……さっきの出来事で昂揚してるから現実直視できてないんじゃねぇかぁ…?」
 利樹が誠を茶化します。
「何とでも言ってください……そういうあなたはどうなんですか……?」
 誠は挑発に乗らずに落ち着いた口調で返しました。


 

「そうだぞ…!他人のことを揶揄するよりも今は自分がどうするかだ……」
「私もやるぅっ……!」
「やります……」
 徹郎が利樹を諌めたのと同じタイミングで静架と舞が意思表示をしました。


 

「さぁ、利樹君はどうする……?」
「や……やるよ……俺がいなけりゃこのチームは機能しないからよ、フヘへへヘ……」
 プライドを保つために皮肉屋の調子で利樹が意思表明をします。


 

「俺ももちろんやる……!」
 最後に気合の入った様子で徹郎が表明しました。

『みんな……ありがとう……!』
 “声”がシンプルだけど心からの謝辞を述べます。


 

『今、この瞬間君たちは本当にチームになったんだ…!それを祝って俺から皆につまらないけど贈り物をあげるとしよう…』
 “謎の声”がそう言うと、
「スゥワンッ……!」
 突如アイボリー色の空が七色に輝き始めました。


 

「ワッ……!?」
「何……!?」
 驚くメンバーを尻目に空の輝きは増し続けます。


 

「グッ……!!」
 あまりの眩しさに皆目を開けられないで閉じてしまいました。
「スゥワンッ……!」
 チームのメンバーは気づきませんが空は元のアイボリー色に戻りました。


 

『もういいぞ……!皆、目を開けてこちらを見るんだ……』
 “声”の語りでメンバーは一同に顔を上げました。

 

「これは……!?」
「おっ……!」
「へぇ……」
「ふむ……」
「カッコイイ……!」

 


 メンバーは皆良いリアクションをしています。
 “声”のプレゼントの正体は戦闘用の服でした。


 

『ハハハッ…喜んでもらえて嬉しいぞ……!これからの闘いを向こうの世界の服で乗り切るのは不可能だし、何よりも君たちは自分の身を守らなくてはいけない…!だからささやかではあるが俺からこれらの服を贈ろう……!』


 

 メンバーはそれぞれの眼前に浮かんでいる服をまじまじと凝視しました。
 上下の戦闘服です。
 服の材質はよくわかりませんが持った感じは非常に軽く、それでいて丈夫な印象を受けます。


 

 徹郎の服は彼の武器である日本刀と同じ黒。
 利樹は同じく真紅。
 舞は同じく紫。
 静架は黄色。
 誠は青というそれぞれのカラーに彩られた戦闘服です。
 それを基調に、金のラメが施されています。


 

「ありがとうございます…!」
 メンバーを代表して徹郎が礼を述べました。
『まだ早いよ…まず着てみろよ……』
 “声”も喜んでいるようでした。


 

「さ、静架ちゃん、私たちはあっちで着替えましょう…」
「うん……!」
 舞が静架を促そうとすると、


 

「そんな水臭いこと言わないでここで一緒に着替えようぜ…!」
 利樹がふざけて言いました。
「バーカ……!」
 舞はそう言って舌を出し、静架と共に消えていきました。


 

「フフッ……!」
 誠も思わず笑っていました。
 その様子を見て徹郎は、
(良い雰囲気になってきたな…!)
 と心の中で呟いていました。

 

 

「スゴイなぁ、サイズぴったりだよ…」
 戦闘服に身を包んだ誠がどこか嬉しそうに呟いています。


 

「ね……静架のこれ、似合う……?」
 着替えを終えた静架が凄い勢いで誠のもとへやって来ました。
 武器のナイフ同様の黄色です。
 女性の下はスカートタイプになっていました。


 

「に……似合う、可愛いよ……!」
「やったぁっ……!」
 気圧された誠の受け答えに静架は素直に喜びました。


 

「あ………」
 静架の後ろをゆっくりと歩いてきた舞の姿に誠は釘付けになりました。
 薄紫色の戦闘服が舞のモデル体型にピッタリと付いていて、彼女のプロポーションを際立てています。
 紫という色が彼女の持つ妖しい魅力を更に増幅させているように誠は感じました。


 

「ヒュゥッ……!色っぽいな……!これなら宇宙人とかもイチコロじゃねぇの……!?」
 乱暴な言い回しで利樹が話しかけてきましたが、それは自分の興奮を抑えるべく言ったものなのだと思われます。
「ありがとう……」
「ピシッ…!」
 軽く会釈した舞は手に持っていた鞭を軽く鳴らしました。
「おっと……」
 利樹は圧倒され口を閉じます。


 

「ハハハハッ……さて、みんなちょっとここに丸くなって座ってくれ……」
 徹郎がメンバーを促しました。
 そのタイミングの良さ、そして言葉の一つ一つに規律と温かみが同居している徹郎の人柄に誠は尊敬の念を抱き始めていました。


 

「ザッ……」
 メンバー全員が無言で腰を下ろします。

 

 

「さて……さっき“声”が言っていた敵のことなんだが……」
 徹郎の切り出しにメンバーは緊張した面持ちになりました。
 今まで戦闘服を着て嬉々としていたのはこれから待っている過酷な未来を少しでも紛らわしたいという思いからだったのでしょう。


 

「正直彼の話は非常に抽象的だ…わかっているのは地球外生命体ということだけで、それがどんな形態をしているのかすらわかっていない状態だ……」
「確かにそう……」
 意志のある眼を持った舞が頷きます。


 

「そして、俺たち以外にもチームがいると言ったがそれすらもわからない状態…」
 利樹も皮肉屋の一面を引っ込めてミーティングに参加しています。
「そう……その“何もかもわからない状態”の中で俺たちは敵と闘わなくてはならないということだけがハッキリしていることだ……」
「そして……“仲間”は今いるこの5人だけ……」
 誠も続きます。


 

「うむ……だからこそ俺たちは今以上に、とは言っても今はないに等しいんだが……チームワークや戦術をしっかりと作っていかなければならない……」
「それができるのは……ここにいる間だけ……つまり今……!」
 誠の声です。


 

「その通りだ……!そこまでみんながわかっているのならストレートに言おう。今から特訓を行う……!」
「特訓……!?!?」
 その前時代的な響きに静架が何故か嬉しそうに反応しました。


 

「各自が武器を使い込むのも良いだろうし、模擬戦でも良いだろう。とにかく訓練を積まないことにはどうにもならん……!」
「面倒だけどしゃあないかぁっ……!」
 意外にも徹郎の提案に真っ先に反応したのは利樹でした。


 

 彼は気だるそうに立ち上がるも、
「ガシッ……!」
 真紅の斧を手に取ると身構え、
「ムンッ…!」
「ブウゥンッ…!!」
 気合もろとも素振りを始めました。


 

「………」
 その様子を呆然と見つめるほかのメンバーたちを見て、
「よし、みんな利樹君に続くぞ…!」 
 徹郎が声がけをしました。


 

「ハイッ……!」
 徹郎の言葉と利樹の気合に導かれて3人が勢い良く飛び出しました。


 

「ムン……!」
 専用剣を上段で構える誠。


 

「ヤアァァァァッ……!」
「ビュウンッ、ビュウンッ……!」
 そのまま彼は一心不乱に素振りを始めました。


 

 何度も何度も…


 

 

 

 

 

 

 

 

~つづく~

 

 

 

*この物語はフィクションです。

 


 

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